AIが描いたイラストで、椅子の位置がおかしくなりました。座っている人のお尻と、椅子の中心がズレているんです。
うちには勝ちパターンがあります。以前の記事で書いた「まずAIに分析させて、本人の言葉で縛ってから直させる」という手です。画風の再現でもポーズの調整でも、驚くほど効きました。
今回もやりました。返ってきた分析は満点でした。
・座面の中心は、お尻の真下に来るべきです
・現在の絵は、座面が後ろに行き過ぎています
・そのため、浮いているように見えます
プロの添削のようです。自分の絵の欠陥を、自分で正確に診断しています。
「その分析を全部守って描き直して」と頼みました。出てきたのは——椅子のデザインが少し変わっただけの、まったく同じ位置の絵でした。
先に結論をお伝えします。AIの「分析する能力」と「作る能力」は、別の能力です。診断が完璧でも、手術ができるとは限りません。この記事では、その線引きの見つけ方を書きます。

語れるのに、手が動かない領域がある
何度か試して、だんだん境界線が見えてきました。
| 頼むこと | 言葉で直せるか |
|---|---|
| 画風・タッチを変える | よく動く |
| 色を変える | よく動く |
| 物を足す・消す | よく動く |
| 表情を変える | だいたい動く |
| AとBの位置関係を直す | ほとんど動かない |
いちばん下だけが、明確に違いました。「これをもう少し右に」「これの真下にこれを」という種類の修正は、言葉でどれだけ正確に合意しても、手が動きません。
面白いのは、AIがズレていることを理解していることです。理解していないから直らないのではありません。理解した上で、同じ絵が出てきます。
これは能力の欠如というより、絵を作る仕組みそのものの性質だと思っています。全体の雰囲気は指示に従えても、細かい座標は毎回引き直されるからです。
結末はあっけない|人間が30秒で直しました
何度かやり取りしたあと、画像編集ソフトを開いて、椅子を選択して、少し動かしました。
30秒でした。
この経験でいちばん学んだのは、技術的なことではありませんでした。
「AIで粘る」と「自分の手で直す」の損益分岐点は、
思っているよりずっと手前にある。
AIに頼んでいると、あと1回で通る気がしてしまうんです。今度こそ伝わるはず、言い方を変えれば、と。そうやって3回、4回とやり直しているうちに、手で直せば終わっていた時間が過ぎていきます。
私は今、「2回やって同じものが出てきたら、手で直す」というルールにしました。2回で変わらないなら、たぶんそれは「動かない領域」です。
不思議な挙動には、たいてい散文的な犯人がいる
同じ日に、もう2件ありました。どちらも「AIが変なことをしている」と思ったのに、犯人は退屈な理由でした。
①人物が毎回消える → 消していたのは私でした
絵の中の人物が、生成のたびに消えるという現象がありました。「AIが人物を描きたがらないのかな」と思っていました。
指示文をよく読んだら、末尾にこう書いてありました。
(人物を描かない)
以前使っていた「人物なし」用のテンプレートから、禁止リストごとコピーして使い回していたんです。消えていたのではなく、私が消していました。
ここから、効く質問が1つ増えました。
それ、何かを流用していませんか?
不可解な現象の原因は、AIの気まぐれよりも「前の設定の生き残り」であることのほうが、ずっと多いです。漂流の記事でも書きましたが、前回をコピーして少し変える方式は、こういう置き土産を運びます。

②「色が違う」と言われたのに、測ったら合っていた
もう1件は、もっと面白い話でした。
「背景がまっ黄色になっている」と指摘されました。でも実際に色を測ると、指定した値とほぼ同じです。直しても「何も変わっていない」と言われます。当然で、最初から合っていたのですから。
謎が解けたのは、相手が何と比べているかを測ったときでした。
指摘した人がふだん目にしているのは、その絵を動画に変換したあとの完成品でした。そして変換の工程で、色が一段沈むんです。実測したら、はっきり差が出ました。
つまり、その人の目の基準は「沈んだあとの色」になっていました。だから沈む前の原稿を見るたびに、毎回「黄色すぎる」と感じていたわけです。
ここから学んだのがこれです。
「AとBが違う」と言われたら、AもBも測る。
Aだけ測って「合ってます」と返すのは、相手の目を否定する構図になる。
そして今回の正解は、色を直すことではありませんでした。原稿を暗くしたら、変換後にさらに沈んで、今度こそ本当にズレます。直すべきは色ではなく、説明のほうでした。「この原稿は、動画にすると一段沈みます」と伝えるだけで、話が終わりました。
よくある質問
位置の修正は、どうしても無理ですか?
やり方によります。作り直すのではなく、部分的に描き直す機能(範囲を指定して塗り替えるもの)なら通ることがあります。私が言っているのは「文章で頼んで、全部生成し直す」やり方の限界です。とはいえ、その機能を探して覚える時間より、手で動かすほうが速い場面も多いです。
分析させる作戦は、やめたほうがいいですか?
いいえ、今でも使っています。「動く領域」ではとても効きます。ただし万能ではないと分かったので、期待の置き方を変えました。分析は「診断」として使い、修理は別の手段を考える。今回の分析も無駄ではなく、どこが問題かが言語化できたおかげで、手で直すのが速くなりました。
文章の生成でも同じことが起きますか?
起きます。「この段落は結論が弱い」と正確に指摘できるAIが、直させると同じような段落を出してくることがあります。私は指摘が的確なのに直らないときは、自分で書き直すようにしました。指摘のほうを材料として使うわけです。
まとめ|診断できることと、直せることは別
- AIは自分の欠陥を満点で分析できても、それを直せるとは限らない
- 画風・色・物の追加削除は動く。位置関係の修正は、ほとんど動かない
- 「AIで粘る」と「手で直す」の損益分岐は、思っているより手前にある。2回で変わらなければ手で直す
- 不思議な挙動の犯人は、たいてい前の設定の生き残り。「それ、何か流用していませんか」
- 「AとBが違う」と言われたらAもBも測る。片方だけ測ると、相手の目を否定する構図になる
- ズレの原因が工程にあるなら、直すべきは中身ではなく説明
AIに何かを直させていて、3回目に入っているなら。
いったん手を止めて、それが「語れるけれど動かない」種類の依頼ではないかを考えてみてください。分析が的確であるほど、あと1回で通る気がしてしまいます。私の場合、その先にあったのは30秒の作業でした。

