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アクセス解析を見ていて、こんな報告を受けました。
日本からの再生が42%で最多。
ただし1再生あたり36秒しか見ていません。
日本の視聴者は、来てすぐ離脱しています。
数字は全部合っていました。再生数も、視聴時間も、割り算も。私も納得しかけました。
でも、ひとつだけ引っかかって、こう聞きました。「その集計、短い縦動画も入っていますか?」
入っていました。そして分けて数え直したら、結論がまるごとひっくり返りました。
先に結論をお伝えします。日本の視聴者は、離脱していませんでした。数秒で終わる動画を、数秒で見て帰っていただけです。これは離脱ではありません。この記事のテーマは「平均を出す前に、混ざっているものを分けたか」です。

分けたら、何もかも違っていた
ひとつの平均に混ぜていたのは、性質がまったく違う3種類でした。分けた結果がこれです。
| 種類 | 主に見ている人 | 1回あたりの視聴 |
|---|---|---|
| 通常の動画(長時間の作業用) | アメリカ 74.5% | 約60分 |
| 生配信(つけっぱなしのラジオ的) | 韓国 98.5% | 約59分 |
| 短い縦動画 | 日本 100% | 4秒 |
驚いたのは視聴時間の差より、客層の差でした。3つとも、見ている国が違うんです。日本の視聴者は100%が短い縦動画のほうにいて、長い動画のほうにはほとんどいませんでした。
つまり「日本人が36秒で離脱」の36秒は、4秒の人たちと60分の人たちを足して割った数字だったわけです。そんな見方をしている人は、どこにも実在しません。
4秒で去るのは、離脱ではない
ここが今回いちばん腑に落ちたところです。
4秒で終わる商品を4秒で消費するのは、正常な利用です。むしろ最後まで見てくれている。それを「36秒で離脱」と呼んでいたのは、長い動画と同じ物差しを当てていたからでした。
言い換えると、私は離脱していた人を見ていたのではなく、別の店の常連さんを見ていたんです。
数字が全部正しくても、結論は間違えられる
この失敗の怖さは、どこにも計算ミスがないことです。
再生数は正しい。視聴時間も正しい。割り算も正しい。何度検算しても、絶対に見つかりません。間違っていたのは計算ではなく、分け方だからです。
以前平均に溶けて消える話を書きました。あれは「同じ種類のものを、粗くまとめすぎた」話でした。今回はもう一段手前で、そもそも同じ種類ではなかった。混ぜてはいけないものを混ぜていたわけです。
だから見つけるための質問も変わります。
×「その計算、合っていますか?」
→ 合っている。永遠に見つからない
○「その平均に、種類の違うものが混ざっていませんか?」
→ 一発で出てくる
間違った平均は、間違った仕事を作る
今回いちばん背筋が寒くなったのは、この先です。
もし分けずに進んでいたら、私は「日本人の離脱を減らす」という仕事に取りかかっていました。冒頭を作り直したり、つかみを工夫したり。会議を開いて、施策を決めて、何週間か試したはずです。
でもその課題は、存在していませんでした。離脱している人がいないので、どんな施策も効きません。効かない理由も分かりません。「もっと頑張ろう」で終わっていたと思います。
間違った平均は、間違った課題を作ります。そして間違った課題は、いくら真面目に取り組んでも解けません。私は存在しない制約の話でも同じことを書きましたが、存在しないものを相手に努力するのは、いちばん報われない働き方です。
逆に、正しく分けたら打ち手のほうから出てきました。「長い動画は英語圏向けに作る」「生配信は今の路線を続ける」「短い縦動画は作らない」——混ぜていたときには、1つも見えなかった結論です。

気づいたのは、データを作った側ではなかった
もう1つ、書いておきたいことがあります。
この間違いを見つけたのは、集計した側ではありませんでした。「短い縦動画も入っていますか?」という質問は、その事業を毎日やっている人からしか出てきません。
数字だけを見ている人には、その数字に何種類のものが混ざっているかが見えないんです。画面には「日本 42%」としか書いていないので、疑いようがありません。
だからAIに分析を任せるときは、こちらから種類の情報を渡すようにしました。
「うちには性質の違うコンテンツが3種類あります。
まず種類ごとに分けて、それから集計してください」
これはルールを埋め込む話と同じで、判断のテーブルに正しいデータを先に載せるやり方です。「間違えないでね」と言うより確実でした。
ブログ運営で、混ぜてはいけないもの
同じ罠は、ブログの数字にもたくさんあります。私が分けるようにしたものを挙げます。
- 記事の種類:辞典のように調べて去る記事と、じっくり読む記事。滞在時間の意味がまるで違う
- 流入元:検索から来た人とSNSから来た人。読む姿勢が違う
- 端末:スマホと パソコン。滞在時間もスクロール量も別物
- 新規と再訪:初めての人と常連さん。直帰率の解釈が変わる
- 自分のアクセス:これは混ぜてはいけない筆頭です
特に1つ目は効きました。用語を調べに来た読者が30秒で去るのは、用が足りた証拠であって、失敗ではありません。それを長文記事と一緒に平均すると、良い記事が悪く見えます。
よくある質問
どこまで細かく分ければいいですか?
目安は「読者の目的が違うか」です。目的が違えば、正しい行動も違います。今回の3種類は、そもそも見ている人の国まで違いました。逆に、目的が同じものを細かく割りすぎると、今度は数が少なすぎて何も分かりません。
分けたら数が少なくなって、判断できません
それも大事な情報です。「まだ判断できるだけのデータがない」と分かること自体が成果だと思っています。混ぜて数を増やせば見かけ上は判断できますが、それは今回のような存在しない結論を生みます。
AIは分けてくれないのですか?
頼めば分けてくれます。問題は「分ける必要がある」と気づく部分で、そこは渡されたデータからは見えません。だから種類の情報は、こちらから先に渡すのが確実です。決めていない項目の話と同じで、言われていないことは点検されません。
まとめ|平均を出す前に、同じ種類か問う
- 数字が全部正しくても、分け方を間違えると結論だけが狂う。検算では見つからない
- 混ぜた平均は実在しない中間の姿を描く(4秒の人と60分の人を足して36秒)
- 4秒で終わるものを4秒で見るのは離脱ではない。物差しを取り違えていた
- 間違った平均は、存在しない課題を作る。真面目に取り組んでも永久に解けない
- 効く質問は「その平均に、種類の違うものが混ざっていませんか?」
- 気づけるのは数字を見ている人ではなく、現場を毎日見ている人
手元のグラフに、性質の違うものが混ざっていませんか。
私の場合、混ざっているものを分けたら、減らそうとしていた「課題」が消えました。そして代わりに、やるべきことが3つ出てきました。

